ネット・ゲーム依存症とは|ネット・ゲーム依存症の予防回復支援|MIRA-i(ミライ) | MIRA-i

ネット・ゲーム依存とは

インターネット・ゲーム依存とは?
予防と回復について

インターネットは、時間と場所を選ばずに利用でき、その便利さと魅力から生活になくてはならないものとなりました。一方で、ネットやゲームにのめり込むあまり、人間関係や生活に支障が出たり、健康を害する場合があります。

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インターネット依存とは?(ゲーム依存症・ゲーム障害含む)

インターネット依存

インターネット依存症(以下「ネット依存」という。)とは、インターネット(オンラインゲームも含む)を過剰に使用し、自分でコントロールができなくなり、日常生活を送る上で支障や問題が発生している状態のことを言います。

ネット依存のほかに、ネット依存症、ゲーム依存症、ゲーム障害、ゲーム中毒、スマホ依存といった言葉も使われています。ネット依存という用語自体は正式に病名として認められていませんが、「ゲーム障害(gaming disorder)」については、2022年1月から施行される「国際疾病分類の第11版(ICD-11)」に、新たな依存症として仲間入りします。つまり、ネット依存がアルコールやドラッグと並び、治療が必要な疾病として扱われることになります。

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2017年の厚生労働省研究班の調査では病的なネット依存が疑われる中高生は93万人(7人に1人)に上ることが推計されました。日本だけでなく、世界的に見ても、若い世代を中心にネット依存が広がっています。現在、日本において未成年者へのネットの規制はありませんが、今後は社会全体で対策を考えていく必要があります。

ゲーム依存
(ゲーム障害)とは

世界保健機構(WHO)は、2018年6月に国際疾病分類第11版(ICD-11)に「ゲーム障害」を追加しました。2019年5月のWHO総会で正式に承認し、2022年1月から発効されます。ゲーム障害という病名がICD-11に入ることにより、ゲーム障害やネット依存に関する研究が進み、治療技術の向上が期待されます。

ICD-11によるゲーム障害の特徴

  • ゲームのコントロールができない(開始、頻度、強度、時間、終了、前後関係)

  • 他の生活上の関心や日常の活動よりゲームを優先する

  • 問題が起きているにもかかわらずゲームを続けてしまう、またはエスカレートする

  • ゲーム行動により、個人や家庭、社会、学業、仕事など生活に重大な支障をもたらすほどの重症度

ゲームにはまる仕組み

オンラインゲームは、パソコンやスマホ、タブレット、ゲーム機器などから、インターネットを経由して、他のコンピュータとデータを交換しながらゲームを進めるものです。
通常のゲームに比べて、相手や仲間が人間であり、終わりがなく、その世界で活動し続けられる実感を持つことができます。

また、サークル、チーム、ギルドなどと呼ばれる「ゲーム内コミュニティ」への参加も魅力の1つで、ネット上で他のプレイヤーと広く交流することができます。

ゲームにはまる仕組み イメージ2

スマホゲームのほとんどは、「フリーミアム」という無料のサービスで顧客を獲得し、特別な機能について料金を課金する仕組みを採用しています。
ゲームを無料でダウンロードできることで、スマホゲームを始めるハードルを低くしています。そして、強いアイテムやお気に入りのキャラなどを課金することでゲーム仲間から尊敬・賞賛され優越感を持つことができ、よりゲームにはまっていきます。
「ガチャ」という課金機能は、一定の額を課金すると、中身がランダムに決まるアイテムを得ることができ「次は何が出るのだろう?」という高揚感を得ます。ギャンブルと似た刺激と興奮であると言われています。
このように、オンラインゲームは多くのはまりやすい仕組みを持っています。

スマホ依存

スマートフォンは2010年頃から日本で普及されるようになりました。
2019年に総務省が行った通信利用動向調査によると、スマートフォンの世帯保有率は初めて8割を超えました。また、2020年に内閣府が行った青少年のインターネット利用環境実態調査によると、10歳~17歳の95%以上がインターネットを利用し、そのうち82%がスマホを利用していることが明らかとなりました。

青少年だけでなく、働く世代や子育て世代の大人もスマホの過剰使用の問題はあります。ながらスマホや、スマホ育児、スマホ首(ストレートネック)などという言葉があるようにさまざまな問題を引き起こしています。


症状・問題・併存障害 イメージ2

症状・問題・併存障害

ネット依存の症状と
生じる問題

4つの症状

① 過剰使用
時間の感覚を忘れて長時間にわたりネットを使いすぎてしまい、日常的な活動をおろそかにする。
② 離脱
ネットを取り上げられたり、ネットができなくなったりしたときに、イライラ、緊張した状態、うつ的な気分になる。
③ 耐性
使用するうちに,使い始めた頃よりも、より良い設備やソフトウェアを求める。ネットを使う時間が次第に増えていく。
④ 悪影響
家族や友人との対人関係が悪くなる、学校・仕事に遅刻・欠席する,疲れやすいなど身体面に問題が出る,といった様々な面に支障が出ている。
その他
家出、暴言、暴力、警察沙汰

ネット依存により生じる問題

ネット依存になると、多くの時間をネットやそれに関連したことに費やします。そのため、勉強や部活、家族や友人と過ごす時間が少なくなります。また、夜中までネットやゲームに没頭することで朝起きられず、学校への遅刻・欠席が繰り返されます。このパターンが固定化すると心理的にも学校に行きにくくなり、本人は自責感や罪悪感からますますネットの世界に逃れたくなります。

学業・仕事
金銭面
遅刻、欠席、留年、退学、転校、成績低下、就労不能、失職、収入減、作業能力低下、浪費(課金等)、詐欺にあう、家事育児困難
精神面
イライラ、うつ、不安、ひきこもり、昼夜逆転、過眠
身体面
やせ、肥満、少食、過食、運動不足、運動機能低下、骨密度低下、栄養障害、エコノミークラス症候群
人間関係
親との不和、兄弟との不和、親戚との不和、配偶者との不和、友人の減少、孤立、家族のうつ、家族のストレス、家族の不眠
その他
家出、暴言、暴力、警察沙汰

ゲーム依存と発達障害

発達障害の傾向とネット依存との関連がこれまでの研究で指摘されています。
発達障害とは生まれつきの脳機能の発達のかたよりによる障害で、主に3つのタイプに分類されています。

ASD(自閉症スペクトラム障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)
学習障害

ネット依存に関係するのは,ASDとADHDと言われています。
ASDは、社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。ゲームでは、直接顔を合わせる必要がないために、現実よりもコミュニケーションが取りやすいことが考えられます。
ADHDは、注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状からなりますが、人によってその症状の現れ方は異なります。好きなことには逆に集中でき、強いこだわりを持つという特徴があることから、ゲームにはまると依存にまで進行してしまうと考えられています。

依存を予防する方法

依存を予防する方法

依存を予防する方法

ネット依存を予防する主なポイントは以下の3つです。

家庭内の使用ルールをつくること
デジタル端末の制限機能の活用
家族間のコミュニケーションを密にすること

家庭内の使用ルールをつくること

家庭内でネットやゲームの使用ルールを作っておくことは非常に重要です。
「スマホは放課後から21時まで」「食事の時はスマホを置く」といった使用する時間帯、ダウンロードや課金など利用方法について決まりを設けます。
ルール作りにおいては、保護者の意見を押しつけるのではなく、子どもにも自主的に考えてもらい、家族全員で話し合って決めるが大切です。また、家族で認識を揃えるために取り決めを書面化しておきましょう。

デジタル端末の制限機能の活用

スマホやゲーム・動画サイトは長時間使いたくなるように設計されており、子どもの意思だけですぐにルールを守れるとは限りません。そのため、スマホやタブレットの制限機能を上手に活用しましょう。
特に、スマホを購入する際は、子どもに有害と思われるページを制限する「フィルタリング」をかけることは必須です。その他に、決められた時間以降、ネットへのアクセスを不可にする「タイマー機能」や、保護者が子どものスマホ機能を制限する「ペアレンタルコントロール」などがあります。
ただし、ネット上には制限を解除するアドバイスは山ほど存在します。フィルタリングや機能制限は万能ではなく、抜け道はいくらでもあるということも念頭に置いておきます。

家族間のコミュニケーションを密にすること

家庭内のルールや制限機能が効果的に働くには、親子の信頼関係が前提になります。普段から家庭でコミュニケーションを取り、子どもを理解する姿勢を持つことが依存への予防につながります。

治療と回復支援

医療機関における治療

依存症の治療には、主に薬物療法と心理療法があります。
ネット依存の薬物療法においては、現在有効性が明らかになっている薬がありません。背景にうつ病、双極性障害、発達障害といった精神疾患を持っている方には、その疾患に合わせた薬が処方されることがあります。
心理療法は、依存症の治療で最も頻繁に用いられる治療で、その中でも認知行動療法(CBT;Cognitive Behavioral Therapy)は依存症治療に効果がある心理療法として世界中の治療現場で用いられています。その他にも、一定期間ネット使用をしない環境の中で、生活リズムを整えることなどを目的に、入院治療やキャンプを実施している医療機関もあります。

回復支援

家族は、「このまま子どもが依存状態から抜け出せないんじゃないか」「色々手は尽くしたけど何をしても効果がない…」など先の見えないトンネルにいるような気持ちに襲われるのではないでしょうか。

ネットやスマホ、ゲームに依存している状態から回復するには、「これさえすれば良い」という解決策は存在せず、回復まで一進一退を繰り返していくため時間がかかるものです。
回復に至るステップを知っていただくことで、「今はどの段階なのか」を把握し、先の見通しを持つことができます。ここでは5つのステップに分けてご説明します。

step01 気付く

回復への第一歩は、まず依存の状態に気付くことから始まります。

しかし依存症は「否認の病」と言われるように、自分が依存症であることをなかなか認められません。「これくらい大したことない」「いつでもやめられる」などと軽く考えたり、「ゲームをやめても良いことなんてない」とあきらめたりします。
とはいえ、本人も「このままじゃまずい」という気持ちをどこかで持っていると言われます。ネットやゲームが心の支えにもなっているため、やめる決心がつかず、やめたいけどやめられないという相反する気持ちを抱き、葛藤しています。

葛藤している本人にやめるよう説得しても衝突してしまいます。まず家族が依存状態であることに気付いたら、本人の状況や心情への理解を深めていくことが大切です。

家族としても、客観的に見て依存なのか、判断しにくいかもしれません。
参考として こちら(ネット・ゲーム依存度チェック) で依存状態についてチェックできます。

step02 治療・相談につながる

依存状態が疑われる場合、医療機関、相談・支援機関に「つながる」必要があります。

このとき「様子を見る」のは危険です。子どもの場合、欲求をコントロールする機能が未熟であるため、急速に依存が進行する場合があります。
自己判断せず、まずは専門家に相談し、助言を得てください。
依存の回復においては、家族だけで抱え込まずに医療機関や相談・支援機関から専門的なサポートを得ていくことが非常に重要です。
回復までの道のりでは困難も多く、ご本人・ご家族ともに不安や焦りを感じやすいため、いつでも誰かに相談できる環境を作っていくことが安心感にもつながります。

相談先・関連団体はこちら(相談先・関連団体一覧)で確認できます。

step03 ネットとの付き合い方を考える

葛藤を扱う

この段階でも、本人は「やめたいけど、やめる決心がつかない」「やめられないかもしれない」と葛藤を繰り返すものです。
現状を維持するのは容易ですが、変化には不安を伴います。カウンセリングでは、「やめたいけどやめられない」といった相反する感情や葛藤をていねいに扱います。本人とのやり取りを通して葛藤を解消し、行動の変化を促していきます。このようなコミュニケーション技法は、動機付け面接法と呼ばれます。

自分の傾向を知る

自分がどのような状況でネットを使うのか振り返り、自分のネット使用の傾向について理解を深めます。例えば、親に怒られてイライラしたときに気分を晴らすのにゲームをする人もいるでしょう。退屈で何もすることがないときに動画を見始めて止まらなくなる人もいるかもしれません。
何がネット使用の「引き金」になるのかを知ることで、引き金となる状況をできるだけ避け、引き金への対処法を検討できます。

メリット・デメリットを考える

ネット使用を減らすこと・やめることのメリットとデメリットを検討します。このまま今の状況を続けたとすると、生活や心身にどんなことが起こるのか等、想像をめぐらせ、書き出してみます。
この作業を行う中で、自分にとってちょうどよいネットとの付き合い方を考えていきます。

このようにカウンセリング場面では、ネットとの付き合い方を考えていくために、さまざまな角度から振り返りを行います。ちょうどよいネットとの付き合い方は、人それぞれ異なるものです。その人の特性や生活状況などを踏まえた上で、支援者とともに見つけていきます。

このようにカウンセリング場面では、ネットとの付き合い方を考えていくために、さまざまな角度から振り返りを行います。ちょうどよいネットとの付き合い方は、人それぞれ異なるものです。その人の特性や生活状況などを踏まえた上で、支援者とともに見つけていきます。

step04 生活習慣を変える

セルフモニタリングを行う

1日の行動を記録するセルフモニタリングは、より客観的に状況を認識するために有効です。思いのほか多くの時間をネットに費やしていることが分かったり、逆に週3日は自分でゲームをやめて就寝できていた、など出来ている点が見つかったりもします。

また記録していくと、成果につながっていく様子が観察でき、さらなる行動継続への動機付けにつながります。行動が継続できると自己効力感(ある状況において必要とされる行動について「自分ならできる」という期待や自信)が高まります。

スモールステップで変えていく

現状の生活を変えていくために大切なのは、「スモールステップで取り組む」ことです。
最初から天と地がひっくり返るような行動計画を立てる必要はありません。

実行に移すことができたらラッキーですが、多くの場合、続かずに挫折したり、そもそもハードルが高すぎて実行できなかったりします。そうすると「やっぱり自分はダメだ」と自分を責めて自己効力感が下がります。

そのため、スモールステップで行動計画を立てます。毎日早寝早起きはハードルが高いのであれば、いつもより10分だけ早く起きてみるといったステップが良いかもしれません。

最初のステップがクリア出来たら、また次のステップというように一歩一歩進めていきます。

望ましい行動を増やす

ネットやゲームの過剰使用を減らすことに焦点を当てすぎず、望ましい行動を増やすことが重要なポイントです。

「〇〇しない」という目標より「〇〇する」という目標の方が実行しやすいはずです。○時~○時はネットをしないと決めたら、その代わりに自分にとって望ましい又はすると良い行動を取り入れます。

ここでもスモールステップで、今すでに出来ていることを継続する、又は増やすことから考えます。それが思いつかない場合、昔出来ていた行動の中から選んでも良いです。今までやったことのないものだとハードルが上がってしまうので、やったことのないものにチャレンジする場合はハードルを下げる工夫が必要になります。

このように少しずつ1日の中でネットやゲームに費やす時間を減らし、本来やるべき行動や自分にとってすると良い行動を増やしていくことで、生活の質を向上させていきます。

step05 過剰使用への対策を立てる

ネット使用を減らすあるいはやめることができると、最初はやめられていることを嬉しく感じて、よい気分で過ごすことができます。しかし,ふとしたきっかけやストレスを感じる場面で「ネットやゲームをもっとしたい」という欲求が再び生じることがあります。
こうした場面を乗り越えるには,事前に対処方法を考えておくことが重要です。

「ネットやゲームをしたい!」という欲求が起こったとき,少しの欲求であれば「また前のようになりたくない」と考えて気をそらしたり,我慢したりして何とかやり過ごすことができるかもしれません。
しかし、日常を退屈に感じて刺激を得たい気持ちが強くなったり、イライラやストレスを感じる場面にぶつかったりすると、その瞬間に冷静に考えることができず、手っ取り早くストレスや欲求を解消できる手段を選んでしまいます。その結果、再びネットやゲームを過剰に使用する可能性があります。

そのため、あらかじめ再び過剰にネットやゲームをしそうな場面を想定し、その場面での対処法を具体的に決めておけば,その時に適切な対処行動を取りやすくなります。

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