ネット・ゲーム依存と回復ステップ

インターネット依存症とは(ゲーム依存症・ゲーム障害含む)

インターネット依存症(以下「ネット依存」という。)とは、インターネット(オンラインゲームも含む)を過剰に使用し、自分でコントロールができなくなり、日常生活を送る上で支障や問題が発生している状態のことを言います。

ネット依存のほかに、ネット依存症,ゲーム依存症、ゲーム障害、ゲーム中毒、スマホ依存といった言葉も使われています。ネット依存という用語自体は正式に病名として認められていませんが、「ゲーム障害(gaming disorder)」については、2022年1月から施行される「国際疾病分類の第11版(ICD-11)」に、新たな依存症として仲間入りします。つまり、ネット依存がアルコールやドラッグと並び、治療が必要な疾病として扱われることになります。

2017年の厚生労働省研究班の調査では病的なネット依存が疑われる中高生は93万人(7人に1人)に上ることが推計されました。日本だけでなく、世界的に見ても、若い世代を中心にネット依存が広がっています。現在、日本において未成年者へのネットの規制はありませんが、今後は社会全体で対策を考えていく必要があります。

ネット依存の4つの症状

ネット依存の主な症状として以下の4つが挙げられます。

① 過剰使用
時間の感覚を忘れて長時間にわたってネットを使いすぎてしまい、日常的な活動をおろそかにする。
② 離脱
ネットを取り上げられたり,ネットができなくなったりしたときに、イライラ、緊張した状態、うつ的な気分になる。
③ 耐性
使用するうちに,使い始めた頃よりも、より良い設備やソフトウェアを求める。ネットを使う時間が次第に増えていく。
④ 悪影響
家族や友人との対人関係が悪くなる、学校・仕事に遅刻・欠席する,疲れやすいなど身体面に問題が出る,といった様々な面に支障が出ている。
その他
家出、暴言、暴力、警察沙汰

依存対象となる主なコンテンツ

ネット依存とひとくくりに言っても、コンテンツに依存しているのか、スマホやパソコンなどの電子機器自体なのか、ネットでつながっている人なのか、何に対して依存しているかは人により異なります。さらに、ネットのコンテンツにも、オンラインゲーム、SNS、動画などがあり、どれか1つを使用している人もいれば、複数のコンテンツ、機器を使用している人もいます。

何に依存しているかを知ることで、ご本人がネットの世界に何を求めているかを理解する糸口が見えてきます。

オンラインゲーム

ネット依存の8割以上はオンラインゲームに依存していると言われます。オンラインゲームとは、パソコンやゲーム機をネットに接続して通信しながら複数のプレイヤーが同時に遊べるゲームです。現在、ポピュラーとなっているゲームの種類は以下のとおりです。

MMORPG

[Massivery Multiplayer Online RolePlaying Game]
多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム

不特定多数の人が音声で会話をしながら、チームで狩りや冒険をするゲーム

FPS

[First-Person Shooter]
一人称視点のシューティングゲーム

架空の戦場を舞台に武器を使って敵チームと戦い、勝敗やランキングを競い合うアクションゲーム

MOBA

[Multiplayer Online Battle Arena]

2つのチームに分かれ、相手の本拠地を破壊し合う戦争ゲーム

SNS・掲示板

LINEやTwitterなどのSNS(Social Networking Service)に依存すると、場所を選ばずにコメントの交換、メッセージのやり取りを際限なく続けてしまいます。そのうち、仲間から置いていかれるのが怖くてやめられなくなるケースが見られます。また、ブログや掲示板の閲覧・投稿、出会い系サイトの閲覧、オンライン小説の閲覧なども依存しやすいものとして挙げられます。主に10~20代の女性に多いのが特徴です。

動画サイト

Youtubeやニコニコ動画やTwitchなどの動画サイトに依存する場合もあり、アニメや興味のある動画を見続けます。ゲームをしている人は、動画サイトでゲーム攻略に関する動画を見たりもします。動画を見るだけでなく、自身で動画を作り、配信することもあります。学研ホールディングスが実施した2018年9月の調査によると、小学生が将来つきたい職業の第3位に「Youtuberなどのネット配信者」がランクインし、子どもたちへの動画サイトの影響力をうかがい知ることができます。

ネット依存で生じる問題

ネット依存になると、多くの時間をネットやそれに関連したことに費やします。そのため、勉強や部活、家族や友人と過ごす時間が少なくなります。また、夜中までネットやゲームに没頭することで朝起きられず、学校への遅刻・欠席が繰り返されます。このパターンが固定化すると心理的にも学校に行きにくくなり、本人は自責感や罪悪感からますますネットの世界に逃れたくなります。

【表】ネット依存で生じる主な悪影響について(中山、2016)

学業・仕事
金銭面
遅刻、欠席、留年、退学、転校、成績低下、就労不能、失職、収入減、作業能力低下、浪費(課金等)、詐欺にあう、家事育児困難
精神面
イライラ、うつ、不安、ひきこもり、昼夜逆転、過眠
身体面
やせ、肥満、少食、過食、運動不足、運動機能低下、骨密度低下、栄養障害、エコノミークラス症候群
人間関係
親との不和、兄弟との不和、親戚との不和、配偶者との不和、友人の減少、孤立、家族のうつ、家族のストレス、家族の不眠
その他
家出、暴言、暴力、警察沙汰

なぜネット依存になるのか

最初は,ネットやゲームをすることは楽しみの1つであったはずですが,依存にまで進行してしまうのはどのようなメカニズムなのでしょうか。
現実の対人関係や学業,仕事などでうまくいかないことがあり,ストレスに対して適切に対処できないと,現実の生活が辛いものになっている一方で,ネットの世界では,ゲームでレベルが上がる達成感を味わえたり,ゲーム仲間から称賛を受けたり,繋がりを感じられたりなど居心地の良いものとなっていくと,現実からの逃避の手段としてネットに依存するということが考えられます。
また,子どもの場合,欲求をコントロールする機能が未熟であるために,「もっとやりたい」という欲求を抑えることが大人よりも難しいのです。そのため,早期からネットを始めるとよりはまりやすく,より早く進行してしまいます。

ネット依存の予防

ネット依存を予防する方法として,まずは物理的な対策を講じることが挙げられます。特に,スマホを購入する際は,子どもに有害と思われるページを制限する「フィルタリング」をかけることは必須です。その他に,決められた時間以降,ネットへのアクセスを不可にする「タイマー機能」や,保護者が子どものスマホ機能を制限する「ペアレンタルコントロール」などがあります。ただし,ネット上には機能制限を解除するアドバイスは山ほど存在します。フィルタリングや機能制限は万能ではなく,抜け道はいくらでもあるということも念頭に置いておきます。
物理的対策と併せて,家庭内でネット使用のルールを作っておくことも非常に重要です。「夕食時にスマホを持ちこまない」といった使用する時間帯,ダウンロードや課金など利用方法について決まりを設けます。ルール作りにおいては,親の意見を押しつけるのではなく,子どもにも考えさせ,家族全員で話し合って決めていくことが大切です。また,家族で認識を揃えるために取り決めを書面化しておきましょう。
物理的対策や家庭内のルールが効果的に働くには,親子の信頼関係が前提になります。普段からご家庭でコミュニケーションを取り,子どもを理解する姿勢を持つことが依存への予防につながります。

ネット依存の治療法

依存症の治療には,主に薬物療法と心理療法があります。ネット依存の薬物療法においては,現在有効性が明らかになっている薬がありません。背景にうつ病、双極性障害、発達障害といった精神疾患を持っている方には、その疾患に合わせた薬が処方されることがあります。心理療法は,依存症の治療で最も頻繁に用いられる治療で,その中でも認知行動療法(CBT;Cognitive Behavioral Therapy)は依存症治療に効果がある心理療法として世界中の治療現場で用いられています。その他にも,一定期間ネット使用をしない環境の中で,生活リズムを整えることなどを目的に,入院治療やキャンプを実施している医療機関もあります。

ネット依存と発達障害

発達障害の傾向とネット依存との関連がこれまでの研究により指摘されています。
発達障害とは生まれつきの脳機能の発達のかたよりによる障害で、主に3つのタイプに分類されています。

ASD(自閉症スペクトラム障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)
学習障害

ネット依存に関係するのは,ASDとADHDと言われています。ASDは,社会的コミュニケーションの困難と限定された反復的な行動や興味、活動が表れる障害です。ゲームでは,直接顔を合わせる必要がないために,現実よりもコミュニケーションが取りやすいことが考えられます。ADHDは,不注意(集中力がない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(考えずに行動してしまう)の3つの症状からなりますが,人によってその症状の現れ方は異なります。好きなことには逆に集中でき,強いこだわりを持つという特徴があることから,ゲームにはまると依存にまで進行してしまうことが考えられます。

回復ステップと支援

家族は、「このまま子どもが依存状態から抜け出せないんじゃないか」、「色々手は尽くしたけど何をしても効果がない…」など先の見えないトンネルにいるような気持ちに襲われるのではないでしょうか。子どもは本当に回復に向かうのか?と不安な思いを抱えている方が多いと思われます。

ネットやスマホ、ゲームに依存している状態から回復するには、「これさえすれば良い」という解決策は存在せず、回復まで一進一退を繰り返していくため時間がかかるものです。
回復に至るステップを知っていただくことで、「今はどの段階なのか」を把握し、先の見通しを持つことができます。ここでは5つのステップに分けてご説明します。

step1気付く

回復への第一歩は、まず自らの状態に気付くことから始まります。
しかし依存症は「否認の病」と言われるように、本人は自分が依存症であることをなかなか認められません。
「これくらい大したことない」、「いつでもやめられる」などと軽く考えたり、「ゲームをやめても良いことなんてない」とあきらめたりします。
とはいえ、実は本人も「このままじゃまずいな」という自覚をどこかで持っていると言われます。ネットやゲームが心の支えにもなっているため、やめる決心がつかず、やめたいけどやめられないという相反する気持ちを持ち、内心では葛藤しています。
家族は、ゲームをしていて入浴や食事をおろそかにする、成績が下がる、スマホを取り上げると目つきが変えて怒るなど、本人の変化に気付き、心配を募らせます。
ただし、一方的に本人にやめるよう説得しても衝突してしまいます。まず家族が依存状態であることに気付いたら、本人の状況や心情への理解を深めていくことが大切です。

家族としても、客観的に見て依存なのか、判断しにくいかもしれません。
依存状態かどうかは こちら(ネット・ゲーム依存度チェック) でチェックできます。

step2治療・相談につながる

スクリーニングテスト等で依存状態に当てはまる場合、まず医療機関、相談・支援機関に「つながる」必要があります。
このとき、「様子を見る」のは危険です。子どもの場合、欲求をコントロールする機能が未熟であるため、急速に依存が進行する場合があります。
自己判断せず、まずは専門家に相談し、助言を得てください。
依存の回復においては、家族だけで抱え込まずに医療機関や相談・支援機関から専門的なサポートを得ていくことが非常に重要です。
回復までの道のりではうまくいかないことも多く、ご本人・ご家族ともに不安や焦りを感じやすいため、いつでも誰かに相談できる環境を作っていくことが安心感にもつながります。
ネット依存に関しては、アルコール依存症などと比べて、専門的にみる医療機関、相談機関が少ないのが現状ですが、少しずつ増えてきています。

step3ネットとの付き合い方を考える


葛藤を扱う

この段階でも、本人はいまだ「やめたいけど、やめる決心がつかない」、「やめられないかもしれない」と葛藤を繰り返している状態です。
葛藤が起こるのは当然のことです。現状を維持するのは容易ですが、変化には不安を伴うものです。そこでカウンセリングでは、「やめたいけどやめられない」といった相反する感情や葛藤をていねいに扱います。本人とのやり取りを通して、葛藤を解消し、行動の変化を促していきます。このようなコミュニケーション技法は、動機付け面接法と呼ばれます。

自分の傾向を知る

カウンセリングの中で、自分がどのような状況でネットを使うのか振り返り、自分のネット使用の傾向について理解を深めます。
例えば、親に怒られてイライラしたときに気分を晴らすのにゲームをする人もいるでしょう。退屈で何もすることがないときに動画を見始めて止まらなくなる人もいるかもしれません。
自分はどのような気分、状況だとネットを使いたくなるのか、何がネット使用の「引き金」になるのかを知ることで、引き金となる状況をできるだけ避け、引き金への対処法を検討することができます。

メリット・デメリットを考える

支援者とともに、ネット使用を減らすこと・やめることのメリットとデメリットを検討します。このまま今の状況を続けたとすると、生活や心身にどんなことが起こるのか等、想像をめぐらせ、書き出してみます。

この作業を行う中で、自分にとってちょうどよいネットとの付き合い方を支援者とともに考えていきます。ただし、この作業では少なからず現実と直面することになるので、本人にとっては辛いものです。そのため、支援者が寄りそい、サポートをしていくことが欠かせません。
このようにカウンセリング場面では、ネットとの付き合い方を考えていくために、さまざまな角度から振り返りを行います。
ちょうどよいネットとの付き合い方は、人それぞれ異なるものです。その人の特性や生活状況などを踏まえた上で、支援者とともに見つけていきます。

step4生活習慣を変える


セルフモニタリングを行う

まず支援者とともに1日の行動を振り返り、1日のうちで変えられそうなポイントを探します。その際、1日の行動記録を紙に書き出しておくことが有効です。これをセルフモニタリングと呼びます。
行動を紙に書き出し、記録することによって、より客観的に状況を認識することができます。思っていたよりも多くの時間ネットに費やしていることが分かったり、逆に週3日は自分でゲームをやめて就寝できていた、など出来ている点が見つかったりもします。
また、記録していくと、成果につながっていく様子が観察でき、行動を継続できていること自体が視覚化されるため、さらなる行動継続への動機付けにつながります。行動が継続できると自己効力感(ある状況において必要とされる行動について「自分ならできる」という期待や自信)が高まります。
変えてみるポイントを見つけたら、その時間にどんな活動を行うか計画を立て、実行します。例えば、休日に退屈なので、ゲームを4時間ほどプレイし続けている場合、そのうち1時間は家族と外に散歩に出かけてみる、というように、ネットやゲームをしている時間を何か別の活動に置き換えてみます。

スモールステップで変えていく

実際の生活を変えていくために大切なのは、「スモールステップで変えていく」ことです。
最初から、明日から毎日、早寝早起きで学校に行くというような天と地がひっくり返るような行動計画を立てる必要はありません。実行に移すことができたらラッキーですが、多くの場合、続かずに挫折したり、そもそもハードルが高すぎて実行できなかったりします。そうすると、「やっぱり自分はダメだ」と自分を責めて自己効力感が下がり、動機付けが低くなってしまいます。
そのため、スモールステップで、「少なくとも80%以上実行できる」という自信が持てる行動計画を立てていきます。毎日早寝早起きはハードルが高いのであれば、いつもより10分だけ早く起きてみるといったステップが良いかもしれません。
最初のステップがクリア出来たら、また次のステップというように一歩一歩進めていきます。はじめの一歩を踏み出すことが出来たら、後は歯車が回転するように意外とその後のステップがスムーズに行くパターンもあります。

望ましい行動を増やす

このとき、ネットやゲームの過剰使用を減らすことに焦点を当てすぎず、望ましい行動を増やすことが重要なポイントです。「○○しない」という目標設定は実は非常に難しいのです。「今日からダイエットでお菓子を食べない!」と決めても、3時になるとついついお菓子に手が伸びてしまうというような経験は誰しもあるでしょう。「お菓子を食べない」と考える時点で、「お菓子」を頭に思い浮かべることになり、「食べたい」という気持ちが生じます。したがって、○時~○時はネットをしないと決めたら、その代わりに自分にとって望ましい又はすると良い行動を取り入れます。 ここでもスモールステップで設定します。今すでに出来ていることを継続する、又は増やすことから考えます。それが思いつかない場合、昔出来ていた行動の中から選んでも良いです。今までやったことのないものだとハードルが上がってしまうので、やったことのないものにチャレンジする場合はハードルを下げる工夫が必要になります。例えば、「習い事を始める」という場合、習い事に行く前段階として、「習い事に関係する本を読んでみる」などと設定できます。
このようにして少しずつ1日の中でネットやゲームに費やす時間を減らし、本来やるべき行動や自分にとってすると良い行動を増やしていくことで、生活の質を向上させていきます。

step5過剰使用への対策を立てる

ネット使用を減らすあるいはやめることができると,最初はやめられていることを嬉しく感じて,よい気分で過ごすことができます。しかし,ふとしたきっかけやストレスを感じる場面で「ネットやゲームをもっとしたい」という欲求が再び生じることがあります。
こうした場面を乗り越えるには,事前に対処方法を考えておくことが重要です。

なぜ対処法を持つことが必要なのか?

「ネットやゲームをしたい!」という欲求が起こったとき,少しの欲求であれば「また前のようになりたくない」と考えて気をそらしたり,我慢したりして何とかやり過ごすことができるかもしれません。

しかし,日常を退屈に感じて刺激を得たい気持ちが強くなったり,イライラやストレスを感じる場面にぶつかったりすると,その瞬間に冷静に考えることができず,手っ取り早くストレスや欲求を解消できる手段を選んでしまいます。その結果,再びネットやゲームを過剰に使用する可能性があります。

そのため,あらかじめ再び過剰にネットやゲームをしそうな場面を想定し,その場面での対処法を具体的に決めておけば,その時に適切な対処行動を取りやすくなります。

過剰使用に至る引き金を整理する

ネットを使いたくなる引き金は人によりさまざまです。引き金は,内的なものと外的なもの2つに分けることができます。

内的な引き金

遅刻、欠席、留年、退学、転校、成績低下、就労不能、失職、収入減、作業能力低下、浪費(課金等)、詐欺にあう、家事育児困難

外的な引き金

ネットをする直前に誰といるか(人)
どこにいるか(場所)
いつネットを使いたくなるか(時間)

例えば,1人でいるときに退屈な気分になると,つい手元にあるスマホでゲームをしてしまうという場面では,内的な引き金は,「退屈」という気分や「暇つぶしをしたい」という考えになります。「ソワソワする」といった身体反応があるかもしれません。外的な引き金は,「1人でいるとき」,「手元にスマホがある」という状況になります。

危ない状況における適切な対処法を考える

どんなものがネットを使う引き金になるかを整理したら,次はそういった引き金を避けるために出来ることを考えます。また,引き金に遭遇した場合にどうするかを考えます。

上記の例では,1日のスケジュールを立てて退屈な時間を作らないようにする,手元にスマホを置かないようにスマホを置く場所を決めるなどが考えられます。1人きりで退屈な場面に出くわした場合は,スマホゲームをする前に友人に電話をしてみるとか,好きな本や漫画を読むなど自分にとって有効な手段を準備しておきます。

また,有効な手段がその場で思いつかない,すぐに実行できない場合は,1人で抱えずに信頼できる人にまず相談することも大切です。使用したくなったときに誰に相談するかも事前に決めておきましょう。

自身で考えた対処法だけでなく,フィルタリングやペアレンタルコントールといった機能,スマホ依存対策のためのアプリなども併せて活用するとさらに良いです。

自分の人生の価値に沿った行動を取る

本来であれば,自分にとって本当に価値のあるものは何かを明確にし,その価値観に基づいて行動できることが理想です。
これは,認知行動療法の1つであるアクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT:Acceptance and Commitment Therapy)においても言われていることです。

ACTでは,ネガティブな思考や感情にとらわれずに,自分の価値や信念に沿った行動を自ら選択し,行動していけるようになることを目指します。

ただ,本当に自分はどうしたいのか,何を大切にしているかを認識するのは難しいことです。特にネット依存の状態に長く居続けると,自分の価値観が分からなくなったり,自暴自棄になっていたりします。

そのため,1人ではなく支援者や家族とともに,回復のステップを踏みながら自分が大切にしていきたいものを見つけていくこと,これも回復に向けてやっておきたいことです。

ゲーム依存(ゲーム障害)とは

診断基準

世界保健機構(WHO)は、2018年6月に国際疾病分類第11版(ICD-11)に「ゲーム障害」を追加しました。2019年5月のWHO総会で正式に承認し、2022年1月から発効されます。ゲーム障害という病名がICD-11に入ることにより、ゲーム障害やネット依存に関する研究が進み、治療技術の向上が期待されます。

ICD-11によるゲーム障害の特徴

  • ゲームのコントロールができない(開始、頻度、強度、時間、終了、前後関係)
  • 他の生活上の関心や日常の活動よりゲームを優先する
  • 問題が起きているにもかかわらずゲームを続けてしまう、またはエスカレートする
  • ゲーム行動により、個人や家庭、社会、学業、仕事など生活に重大な支障をもたらすほどの重症度

ゲームにはまる仕組み

オンラインゲームは、パソコンやスマホ・タブレット、ゲーム機器などから、インターネットを経由して、他のコンピュータとデータを交換しながらゲームを進めるものです。
通常のゲームに比べて、相手や仲間が人間であり、終わりがなく、その世界で活動し続けられる実感を持つことができます。
また、サークル、チーム、ギルドなどと呼ばれる「ゲーム内コミュニティ」に参加することができるのも魅力の1つで、ネット上で他のプレイヤーと幅広く交流することができます。
スマホゲームのほとんどは、「フリーミアム」という無料のサービスで顧客を獲得し、特別な機能について料金を課金する仕組みを採用しています。
ゲームを無料でダウンロードできることで、スマホゲームを始めるハードルを低くしています。そして、強いアイテムやお気に入りのキャラなどを課金することによりゲーム仲間から尊敬されたり、褒められたりすることで優越感を持つことができ、よりゲームにはまっていきます。
「ガチャ」という課金機能は、一定の額を課金すると、中身がランダムに決まるアイテムを得ることができ、「次は何が出るのだろう?」という高揚感を得ます。これはギャンブルと似た刺激と興奮であると言われています。
このように、オンラインゲームは多くのはまりやすい仕組みを持っています。

スマホ依存とは

スマートフォンは2010年頃から日本で普及されるようになりました。
2018年の総務省の調査では、スマホの個人保有率は多くの世代で増加傾向にあり、20代~30代の90%以上がスマホを保有しています。
また、2018年の内閣府の調査では、小学生~高校生の青少年に関して、90%以上がインターネットを利用しており、そのうち、高校生の90%以上がスマホでネットを利用していることが明らかとなりました。

SNSで友達とコミュニケーションを取ったり、音楽や動画を見たり、ゲームをしたり。
スマホ一台あれば、いつでもどこでも楽しむことができます。
そのため、気付かないうちに長時間使用し、学校や仕事、布団の中でもスマホを手放せない状態、つまり依存のレベルにまで達していることがあります。
依存のレベルになると、本人が「やめなくては」と思っても、自分でコントロールすることが難しくなります。

青少年だけでなく、働く世代や子育て世代の大人もスマホの過剰使用の問題はあります。ながらスマホや、スマホ育児、スマホ首(ストレートネック)などという言葉があるようにさまざまな問題を引き起こしています。

【参考資料】

監修者:MIRA-i インターネット依存症専門 公認心理師 / 臨床心理士 森山 沙耶
監修者所属学会:日本心理臨床学会、関東甲信越アルコール関連問題学会

ネット・ゲーム依存度チェック

テスト

インターネット依存度テスト(Internet Addiction Test ;IAT)

「インターネット依存」の概念を提唱したアメリカのキンバリー・ヤングが作成したスクリーニングテストです。20項目の質問に対し、5段階で回答します。

  • 【1】 気がつくと思っていたより、長い時間インターネットをしていることがありますか。

  • 【2】 インターネットをする時間を増やすために、家庭での仕事や役割をおろそかにすることがありますか。

  • 【3】 インターネットをする時間を増やすために、家庭での仕事や役割をおろそかにすることがありますか。

  • 【4】 インターネットで新しい仲間を作ることがありますか。

  • 【5】 インターネットをしている時間が長いと周りの人から文句を言われたことがありますか。

  • 【6】 インターネットをしている時間が長くて、学校の成績や学業に支障をきたすことがありますか。

  • 【7】 他にやらなければならないことがあっても、まず先に電子メールをチェックすることがありますか。

  • 【8】 インターネットのために、仕事の能率や成果が下がったことがありますか。

  • 【9】 人にインターネットで何をしているのか聞かれたとき防御的になったり、隠そうとしたことがどれくらいありますか。

  • 【10】 日々の生活の心配事から心をそらすためにインターネットで心を静めることがありますか。

  • 【11】 次にインターネットをするときのことを考えている自分に気がつくことがありますか。

  • 【12】 インターネットの無い生活は、退屈でむなしく、つまらないものだろうと恐ろしく思うことがありますか。

  • 【13】 インターネットをしている最中に誰かに邪魔をされると、いらいらしたり、怒ったり、大声を出したりすることがありますか。

  • 【14】 睡眠時間をけずって、深夜までインターネットをすることがありますか。

  • 【15】 インターネットをしていないときでもインターネットのことばかり考えていたり、インターネットをしているところを空想したりすることがありますか。

  • 【16】 インターネットをしているとき「あと数分だけ」と言っている自分に気がつくことがありますか。

  • 【17】 インターネットをする時間を減らそうとしても、できないことがありますか。

  • 【18】 インターネットをしていた時間の長さを隠そうとすることがありますか。

  • 【19】 誰かと外出するより、インターネットを選ぶことがありますか。

  • 【20】 インターネットをしていないと憂うつになったり、いらいらしたりしても、再開すると嫌な気持ちが消えてしまうことがありますか。

診断する

各質問の回答を合計した得点が判定結果になります。

あなたの得点50

得点が高いほど依存の度合いが強いことになります。

20~39点平均的なオンライン・ユーザーです。

40~69点インターネットによる問題があります。インターネットがあなたの生活に与えている影響について、よく考えてみてください。

70~100点インターネットがあなたの生活に重大な問題をもたらしています。すぐに治療の必要があるでしょう。

引用:独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センターホームページ/ネット依存治療部門

テスト

10問版インターネットゲーム障害テスト(Internet Gaming Disorder Test10;IGDT-10)

アメリカ精神医学会の疾病分類DSM-5の「インターネットゲーム障害」に当てはまるかを簡易的に調べることができます。「ゲーム」とは、オンライン、オフラインなどを含めたすべてのビデオゲームのことです。過去12ヶ月間で3段階のどれに当てはまるか選んでください。

  • 【1】ゲームをしていないときにどれくらい頻繁に、ゲームのことを空想したり、以前に したゲームのことを考えたり、次にするゲームのことを思ったりすることがありましたか。

  • 【2】 ゲームが全くできなかったり、いつもよりゲーム時間が短かったとき、どれくらい頻繁にソワソワしたり、イライラしたり、不安になったり、悲しい気持ちになりますか。

  • 【3】 過去12ヶ月間で、十分ゲームをしたと感じるために、もっと頻繁に、またはもっと長い時間ゲームをする必要があると感じたことがありますか。

  • 【4】 過去12ヶ月間で、ゲームをする時間を減らそうとしたが、うまく行かなかったことがありますか。

  • 【5】 過去12ヶ月間で、友人に会ったり、以前に楽しんでいた趣味や遊びをすることよりも、ゲームの方を選んだことがありますか。

  • 【6】 何らかの問題が生じているにもかかわらず、長時間ゲームをしたことがありますか。問題とはたとえば、睡眠不足、学校での勉強や職場での仕事がはかどらない、家族や友人と口論する、するべき大切なことをしなかった、などです。

  • 【7】 自分がどれくらいゲームをしていたかについて、家族、友人、または他の大切な 人にばれないようにしようとしたり、ゲームについてそのような人たちに嘘をついたことがありますか。

  • 【8】 嫌な気持ちを晴らすためゲームをしてことがありますか。嫌な気持とは、たとえば、無力に感じたり、罪の意識を感じたり、不安になったりすることです。

  • 【9】 ゲームのために大切な人間関係をあやうくしたり、失ったことがありますか。

  • 【10】 過去12ヶ月間で、ゲームのために学校での勉強や職場での仕事がうまくできなかったことがありますか。

診断する

あなたの得点0

質問1~8の「よくあった」を各1点、質問9~10はどちらかまたは両方が「よくあった」場合を1点と数えます。合計5点以上の場合に「ゲーム依存」と考えられます。

引用:樋口進「ネット依存・ゲーム依存がよくわかる本」講談社、2018より抜粋